短歌」カテゴリーアーカイブ

[短歌]太陽よゆっくり沈め西を向くひとに優しいときを与えて

父や愛犬を失ったときの感覚を、僕は何度も皮膚を剥かれるような痛みだと表現をしてきました。極楽の居場所が西方に在るのだと知り、以来、この痛みは夕焼けに抱いてもらうことにしています。海で、ときどき、同じようにして西の遠くを眺めている人たちを見かけると、その語らいを誰にも邪魔されることのないよう、急がない太陽を願ってしまう理由です。

太陽よゆっくり沈め西を向くひとに優しいときを与えて


[短歌]スヌーピーから教わった休むこと明日は今日より素敵だからね

あした、こんなことがあったらどうしようと不安に落ちたまま夜を過ごすよりも、きっと、こんなことがあるから楽しいに違いないと星たちに笑えるほうが、間違いなく幸せなのだろうと思います。未来は来るのではなく、未来は創っていくものなんだと、足元のスヌーピーが教えてくれました。

スヌーピーから教わった休むこと明日は今日より素敵だからね


[短歌]一滴を僕に注いでくれたからずっと笑っていられたのです

すべてを与えよう、すべてを与えられようとしていたころを思えば、いま、全体のなかの一滴となって、ほんのすこし誰か何かに潤いを与えられていることを幸せだな、と思うのです。届く場所に在るということ、響く場所にあるということ。ここから、すべてに届くのです。ほんの一滴、されど一滴。

一滴を僕に注いでくれたからずっと笑っていられたのです


[短歌]壊さない悲しませない泣かせないそんなすべてが重すぎたかな

大切にすることと押し付けることの違いは、離れてみて、ようやく知ることができました。分かってくれない、のではなく、分からせようとしていたこと。僕の放つ矢印は、どれも重たすぎて傷つけて、未来にはとてもしんどかったですね。自由は軽くて、自由に向かうには重たくて。そんな日々のすべてが、いま、言葉になって、僕らしさを構成しています。

壊さない悲しませない泣かせないそんなすべてが重すぎたかな


[短歌]もう終わるころにひときわ美しくそれぞれに来る次の季節は

そういえば花火大会のフィナーレはひときわ美しく、まもなく静寂が訪れるのでありました。くすんだようになってしまった僕たちのお互いにも、すこしだけ色味が増して終わっていったのでしたね。季節を渡って次のページには、どんな色とテキストで物語が始まっていったのだろうと想像をしてしまうことがあります。

もう終わるころにひときわ美しくそれぞれに来る次の季節は


[短歌]もう今日を疲れたのなら眠ろうかチカラでいるよ明日も未来も

明日に借金を残してしまえばしんどくなりますが、仕切り直しの君のチカラになれるのならば、あえてあえての余力だと考えることにしましょうか。たくわえたエネルギーに、手のひらを重ねるようにして加速をしましょう。だから今はね、あしたへおやすみ。

もう今日を疲れたのなら眠ろうかチカラでいるよ明日も未来も


[短歌]手と手と手 神戸は強くなりました海に浮かんだ嘘が悲しい

神戸の海にやってきたクリスマスツリーは、その物語が二転三転して、亡くなった魂たちを鎮めるはずが、栄誉を求める人のためだけに潮風に晒され続けました。木が可哀想なのではなく、僕たちは、この地の魂たちを利用されたように感じたことが悲しいのだと思います。あまりにも嘘の多い、冬の思い出でした。

手と手と手 神戸は強くなりました海に浮かんだ嘘が悲しい


[短歌]一瞬で一生になる恋をした伝えたいのは色だけだった

舞い落ちる一瞬の時間で、色を抱きました。幾度かの横顔に触れて、それは確信になっていきました。点は未来へ現在進行形。この色こそは失いたくないと、言葉を選びながら空想を繰り返しています。

一瞬で一生になる恋をした伝えたいのは色だけだった


[短歌]書く僕とピアノの僕と撮る僕と伝えることを生きていきます

いつも明け方まで僕のため息を聞いてくださった方が、急逝されました。花に美しく飾られた棺に、これまでのありがとうと、これからの生き方を伝えました。酒に生きたあなたへ。僕は、伝えることを生きていきます。

書く僕とピアノの僕と撮る僕と伝えることを生きていきます


[短歌]神戸にはもう特別な木があって祈りの街の空は静かに

傷を知っている赤くて優しいポートタワーが、神戸にはもう、十分にクリスマスツリーで、嘘とお金の匂いのする木は必要ないのではないかと思いました。祈る空、鎮める海のことは、どうか、静粛なものであってほしいと願います。

神戸にはもう特別な木があって祈りの街の空は静かに


[短歌]僕たちは生まれる場所を選べないだから咲きたいように咲くんだ

誰かに決められることではありません、誰かに押し付けらることでもありません。種は誰にも、道はそれぞれ。咲きたいように咲いて、そうして、散っていく。そんな幸福を大切にしていきたいですね。

僕たちは生まれる場所を選べないだから咲きたいように咲くんだ


[短歌]海と空だけに聞かせている話クジラは恋をしているのです

帰り道のテトラポッド、しばらく、海と空は話を聞いてくれました。作戦会議も、涙の理由も、一途な歴史は茜の射し込んだ青たちがよく覚えてくれています。さて、僕はもう、大人になりました。どうかその秘密は、開くことなく、永遠に閉じ込めておいてくださいね。

海と空だけに聞かせている話クジラは恋をしているのです


[短歌]夕焼けを終わりにたとえたがるけどほらね僕らは燃えているんだ

夕暮れの公園のベンチには、もう、知らない誰かたちが笑いあっています。思い返せばあれだけの時間を、何を話して過ごしたのでしょうか。陳腐な言葉だと思います、燃えるって。でも、そんな火傷が、とても懐かしいのです。

夕焼けを終わりにたとえたがるけどほらね僕らは燃えているんだ


[短歌]傷のない顔で行ったり来たりするひとは昔と今を生きてる

今日を笑っているあの人にも、涙の歴史があったことでしょう。それぞれ傷を持ち寄って、それぞれに傷を隠し合って、いま、この場所の空気が混ざり合っている。みんな嘘つきで、みんな今を一生懸命です。

傷のない顔で行ったり来たりするひとは昔と今を生きてる


[短歌]平和には遠い誰かを知っていて祈りは無力なんだろうけど

街のあちこちにクリスマスツリー。鈴と光に満ちた華やぎの向こうには、いまも不穏な空気に壊れそうな人たちがいて、僕は僕たちは、それに祈りを向けることしかできません。無力な祈りにどうすれば、熱量は伴うのでありましょうか。

平和には遠い誰かを知っていて祈りは無力なんだろうけど


[短歌]騙すとかうまく言うとか壊すとか無縁に光り続けたふたり

打算もテクニックもなく、ただ想いを寄せ合ったふたりは危ういくらい光り続けました。光をよぎった小さな影一つ。清濁併せ吞むことができなくて、若い二人には次第に闇に包まれるようになってしまったのです。

騙すとかうまく言うとか壊すとか無縁に光り続けたふたり


[短歌]穏やかに丸い言葉を選びつつサヨナラをした冬の入口

美しく優しく、綺麗に節目を越えていきました。でもね本当は、それはもしかすると、未練をぶつけてくれるのではないかという一縷の期待があったからなのです。冬の風はとても、冷たかったですね。

穏やかに丸い言葉を選びつつサヨナラをした冬の入口


[短歌]少年と少女は闇の真ん中で色を求めて泣いていました

自分たちの意思とは関係のないところで、さまざまなチカラによって道が塞がれてしまうことがあります。闇の向こうに圧力たち。すべてを捨てて走り出すこともできず、僕たちは空想に身を置いて、泣き続けることしかできませんでした。

少年と少女は闇の真ん中で色を求めて泣いていました


[短歌]ことばにも武器と薬があるように秋は不在を笑って泣くね

大切な人のいなくなった空間を、「いないんだ」と強く感じさせるのが秋の悪いところです。また思い出してしまった自分を笑ったり泣いたりして、夏はキーンと、秋はしんみりと、遠く遠くに想いを飛ばしてしまうのです。

ことばにも武器と薬があるように秋は不在を笑って泣くね


[短歌]君の住む街へ伝染するように言葉に添える色があります

夜中に書く手紙は情熱的になりすぎて危険ですが、えいやっと投函してしまうくらいには一生懸命だったのです。大人になって、落ち着いて、温度は調節するようにはなりましたが、(伝われ、伝われ、響け、響け)と思う気持ちは昔も今も、なのです。

君の住む街へ伝染するように言葉に添える色があります