[川柳]梅雨明けのもう動かない蝉の骸

空が晴れたら一番に飛び出したがるけれど、ぬかるんだままの土に滑っては大怪我をしてしまうことがある。夏の本番が来る前に、もう空に腹を向けた蝉が転がっていた。どんな夢を見ていたのだろう。どれだけ生きたかったのだろう▼経営者になって10年が過ぎた。経験相応の慎重さは、大胆な行動へのブレーキになりがちでよしあしだ。逢えなかったものはいくつ、遭わなかったものはいくつ、数えられるわけのないものに指を折っては、また、空虚な時間を重ねてしまう臆病がいる▼夏の真ん中にひとり、雲の流ればかり見ている。

梅雨明けのもう動かない蝉の骸
ふあうすと2015年8月号裏表紙