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[川柳]逆さまの財布に咳が入ってた

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尾崎放哉の「咳をしても一人」という俳句(自由律俳句)は有名だが、彼が神戸の須磨寺に身を置いてしばらくを過ごしたことは意外に知られていない。境内には「こんな良い月をひとりで見て寝る」という句碑もあって、その関係性を知ることができる▼数年前、資金繰りに苦しんでいた僕はこの「逆さまの財布に咳が入ってた」という句を詠んだ。いろんな応援があったけれど「私財を投げ打ってでも援助するよ、君なら大丈夫」と言ってくださった人のおかげで立ち直ることができた。月末が来るたび苦しいのは変わらずとも、月末が来るたび頑張ろうと思えるのはその人の応援があったからこそ。咳をした僕の背には、大きくて温かい手のひらがあったのだという今だから言える話。

逆さまの財布に咳が入ってた
ふあうすと2014年12月号「明鏡府」掲載