[短歌]見上げればひとつの屋根があるというたとえばそんな夢を見ていた

雨ばかりでため息ばかり、そうしてひとつの屋根の下。ぽこぽこと珈琲、しゃららんと音楽。好きな本のページを繰りながら午後を過ぎていく。きっとそういうことを幸せと呼ぶのだと思っていました。夢はもう遠くの雨の下で。

見上げればひとつの屋根があるというたとえばそんな夢を見ていた


[短歌]ねぇ何を見てるの?何を食べてるの?きみの世界にぼくはいますか?

さて、いまは、どこで、だれと、なにを、どんなふうに、ぼくは、どこに、と、お出かけ日和の太陽を恨めしく思ってしまうことがあります。だからでしょうか、視界を曇らせる雨の日に飲む珈琲に、僕はひとときの安堵をするのです。

ねぇ何を見てるの?何を食べてるの?きみの世界にぼくはいますか?


[短歌]声援の染み込んでいる芝生にも静かに祈る人がいました

ここに立つすべての人が主役になれますように、と、光のあたらない場所で、静かに丁寧に祈る人たちがいます。僕たちの歴史と、僕たちの立つ場所は、誰かによって支えられてきたものだという、この、確かな礎に、忘れてはいけないことがありますね。

声援の染み込んでいる芝生にも静かに祈る人がいました


[俳句]挙手をしても一人

咳をしても一人、挙手をしても一人。世界は広いのでも狭いのでもなく、空間を埋めてくれる何か誰かの存在によって、表情を変えていくのです。咳をしても一人、挙手をしても一人。いつかまでの一人、いつかの一人。

挙手をしても一人


[短歌]モノクロの僕を終えたら車窓にはどんな光が射したのでしょう

僕と過ごした終わりのころの時間がモノクロだったとして、その後、どんな光を覗いたのだろうと考えてしまうことがあります。光のなかで時々は、思い出してくれることはあったでしょうか。

モノクロの僕を終えたら車窓にはどんな光が射したのでしょう


[短歌]好きな本、好きな木の下、好きな歌、好きな青空、好きだった人

いまもむかしも変わらない、好きなこと。あえて過去形なんかにしてみせて。

好きな本、好きな木の下、好きな歌、好きな青空、好きだった人


[短歌]置いていきなよ まっすぐにゆく君の荷物はぜんぶ引き受けるから

出立を決めた眼差しは、どうしてこんなにも清らかで遠いのでありましょうか。もう過去になってゆく荷物たちは、どうぞここへ置いて、わたしにはわたしの、あなたにはあなたの道があります。まっすぐを曲げずに、どうか曲げずに幸せに。

置いていきなよ まっすぐにゆく君の荷物はぜんぶ引き受けるから


[短歌]似た人がいます、重ねてみたりして。もう何年さ、いい大人だよ?

街は罪作りに僕を昔へ誘おうとします。これはあの日と同じ風だな、匂いだな。そして向こうに見えるシルエット。昨日の続きのような手がかりたちが、すこしだけ楽しく、とても苦しく、渦になった記憶に迫ってきます。

似た人がいます、重ねてみたりして。もう何年さ、いい大人だよ?


[短歌]約束の残がいたちが散る空は緋色にはもう広すぎました

約束の欠片たちを探して触れていこうとすると、多すぎて、粉々になりすぎて、ひとつひとつを追いかけて想いを馳せるにはあまりに空が広すぎたのでした。もう寄せて集めることも叶わない幾多の約束。人生を過ぎて、言葉にしたときの覚悟を思い出すことがあります。

約束の残がいたちが散る空は緋色にはもう広すぎました


[短歌]流されてみるのにもいる勇気とか ごめん弱くてごめん足踏み

選べなくて、では流されてみようと思って。でも結局、流され始めるその瞬間にも、やっぱり乗るという勇気が必要で。そんな優柔不断をいつまでも待ってくれているはずもなくて、だからあの時を思い出すたび、何度も声に出して謝りたい気持ちになってしまう。

流されてみるのにもいる勇気とか ごめん弱くてごめん足踏み


[短歌]白線の内側で聞く雨の音どうして乗らなかったのだろう

危険を承知で乗り込めば、もしかするとあの温もりに包まれたのかもしれない。選ばないのも自由、選ぶのも自由。でも僕たちは知っている。選ばなければ、心の奥にずっと霞が残ってしまうということを。

白線の内側で聞く雨の音どうして乗らなかったのだろう


[短歌]勲章が欲しくて急いだとしてもひとりぼっちの色は寒いね

色を急ぐと季節の先頭に立つことができる。色を急ぎ過ぎると孤独の先頭に立たなければならない。なんのために急ぐのか、急ぐとどうなるのか。そう、急ぎ始めた理由を、僕たちはすぐに忘れてしまうから困る。

勲章が欲しくて急いだとしてもひとりぼっちの色は寒いね


[短歌]窮屈な空をあきらめない君はやがて光に触れるのでしょう

諦めない方向にあるのが空で、諦めない瞳に宿るのがチカラなのでしょう。光の場所は心が決めるということを、伸びていく、君の右手に左手に教えられたような気がしました。

窮屈な空をあきらめない君はやがて光に触れるのでしょう


[短歌]一日の終わりに影は言いました「役割なんだ、これでいいんだ」

どんな光も、光として存在するのではなく、影によって光のカタチを示すことができるのです。いまは、とても苦しい影が差したのだとしても、それはまた、誰かを光とする役割のこと。微笑んだら勝ちです。

一日の終わりに影は言いました「役割なんだ、これでいいんだ」


[短歌]ぎこちない温もりを泣くライオンがひろったものは遅咲きの種

強くいることを遺伝子の歴史に運命づけられて、きみはひとりで泣くのでしょうか。底に触れてひろったものが種ならば、だいじょうぶ、明日は優しく咲けるのですよ。

ぎこちない温もりを泣くライオンがひろったものは遅咲きの種


[短歌]一番じゃなければ意味のないことをもう一番に遠い空から

「一番じゃなければダメなんですか」「一番じゃなければダメなんですよ」「どうして一番でいられなかったのですか」「一番大切にしないといけないことを忘れていたからですよ」

一番じゃなければ意味のないことをもう一番に遠い空から


[短歌]それは海 与えてくれた日々たちが風に紛れて囁くのです

穏やかで清らかで広くて優しい。思い出は時間とともに美化されていくのでしょうが、光る水あってこその景色です。傷付いた、のではなく、与えられた日々。今日に続くまでの、それはそれはとても美しいお話でした。

それは海 与えてくれた日々たちが風に紛れて囁くのです


[短歌]魂を置き去りにしたトンネルで乾いたままの僕の口笛

命を懸けて、なんて言ってしまったものだから、魂はきっと青いトンネルに残ったまんまなのだろう。あれからの永遠、同じようにはもう、口笛を吹くことはできずに。

魂を置き去りにしたトンネルで乾いたままの僕の口笛


[短歌]旋律に祈りをこめて伝えます僕の和音になってください

旋律に祈りをこめて伝えます僕の和音になってください #短歌 #短歌フォト #フォト短歌 #言葉 #詩 #鍵盤

Nishibata Yasutaka / 西端 康孝さん(@bata)がシェアした投稿 –

YESから始まった、それはとても美しい奏で。未来とか約束という言葉を多用して、この響きを永遠のものにしたがった。音楽で伝えようとしたことを気障だと笑うかもしれない。照れ隠しだったんだ。

旋律に祈りをこめて伝えます僕の和音になってください


[短歌]あいだには小さな川がありました やがて渦へとなりゆく川が

価値観の相違は気付いても気付かない顔をするにかぎる。埋めようとすれば、渦になって、ふたりを深く傷付けてゆく。でも、僕のものにしたがったんだろうね。全力で埋めようとしてしまった過ちのことを、穏やかに流れる小さな川を渡るたび、思い出してしまう。

あいだには小さな川がありました やがて渦へとなりゆく川が