月別アーカイブ: 2017年2月

[川柳]始発まで頷いていてくれるかい?

「わかるよ」のひと言だけで救われる夜もある。この愚痴や相談に必要なのは答えなのか共感なのか。察してくれる人の温度にもたれて、僕の弱さに肯定をもらった。

始発まで頷いていてくれるかい?
ふあうすと2017年3月号「明鏡府」掲載


[川柳]正しくて優しくてほら嘘をつく

何が正しいのかを僕は知らないし、本当に優しいのかどうかも分からない。ただ、そうなんじゃないかな、と思う器の大きな人たちは皆、自分の正義や性格を決して主張はしてこないし、上手に嘘をついて、僕を前へ立てようとしてくれる。頭が良くて優しい人たちのする先回りに、僕はしばらく経ってから、ようやく気が付くのだった。

正しくて優しくてほら嘘をつく
ふあうすと2017年3月号「明鏡府」掲載


[短歌]微粒子になってしまった日々があり指が和音を思い出さない

「忘れていない」はずのことも、断片となり、微粒子となって宙を彷徨う。もう、拾い集めることもできないくらい粉々になってしまった日々のことは、確かに存在したのに、見えなくて、共鳴をしない。色も音も匂いも、今の僕を構成しているはずなのに、もう。

微粒子になってしまった日々があり指が和音を思い出さない


[短歌]毛布さえかけてやれずにいた日々を今でも夢に見てしまうのは

夢を伝えるのは簡単なことだった。夢の通りに毛布を選んであげることは難しかった。置き去りにしたままの「いつか」は、今でもチクチクと細胞のどこかで僕を責め続ける。あの日あの時の分岐点。先送りにしては誤魔化してばかりいた右や左に、僕はどれだけの全力を尽くせたのかな。

毛布さえかけてやれずにいた日々を今でも夢に見てしまうのは


[短歌]まっすぐはやがて形を変えてゆく「疲れたね」って君は笑った

始まりの通りにすべてが進んでいくわけはないのだけれど、僕は「ぜったい」という言葉を使って、指切りを求めたがった。感情よりもルールに支配されていく空気は重たい。「疲れたね」という言葉に、「だったらどうすれば?」と問い返す。答えは分かっていたくせに、分かっていない顔をして問い返したんだ。

まっすぐはやがて形を変えてゆく「疲れたね」って君は笑った


[短歌]春の来るただそれだけの確信が遠かったんだ だからごめんね

「信じる」や「待つ」という言葉の響きは美しくても、僕たちはすぐに、それを演じようとする自分に酔っているだけであることに気付く。「信じるよ」という言葉の裏側には「疑わないよ」という自分への戒めがあるということ。不安の妄想が、言葉をナイフにしてしまう。

春の来るただそれだけの確信が遠かったんだ だからごめんね


[短歌]いつか来た涙の場所と言うのならここから先の背に任せてよ

案外、フォルダ保存なんだな、と思う、その涙の痕に、今度こそちゃんと、上書きをしてやりたいと決める。笑いながら、苦労を見せず、背を、大きく、僕は、これからのことだけを。

いつか来た涙の場所と言うのならここから先の背に任せてよ


[短歌]便箋と切手とペンと言の葉と散るはずのない二人だったと

永遠に続く青はないのだと知ったのは、いつ、どの点にいた僕のことだっただろう。青の散っていく傷みを知った今は、必ず春の来ると約束された冬にいたいと思ってしまうことがある。それを消極的と呼ぶのか、夢見がちと呼ぶのかは知らない。

便箋と切手とペンと言の葉と散るはずのない二人だったと