月別アーカイブ: 2016年11月

[川柳]言葉だけ きれいな言葉だけでした

伝えてあげられたのは、言葉だけだった。パンにも、毛布にもならない、ただ、耳に触れただけの言葉のいくつかは、残響となって、埋まらない僕の箱のなかを永遠に往く。振り子のように僕を打つ響き、今なら、どんなことをしてあげられるのだろうと想う。

連作川柳 [1][2][3][4]
言葉だけ きれいな言葉だけでした
ふあうすと2016年12月号「明鏡府」掲載


[川柳]「おかげ」って言うたび僕が薄くなる

やがて雨の向こうに君は虹を見つけた。「おかげで」と笑って言うたび、微力にさえなれなかった自分が小さく、薄くなってゆく。強さの意味を考え、強さとはずっと遠いところで、僕はその声を聞く。

連作川柳 [1][2][3][4]
「おかげ」って言うたび僕が薄くなる
ふあうすと2016年12月号「明鏡府」掲載


[川柳]無力だと思う 微力はどこにある

(そんなわけはない)と強く思ったところで、僕には何もできない。チカラの源を探して、教科書を求める。それで何かを補えるわけでも、足してあげられるわけでもない。いくつかの選択肢を示して、それなりの役割を果たしたような顔をして佇むだけだ。この腕は空(くう)を掴むだけの無力。

連作川柳 [1][2][3][4]
無力だと思う 微力はどこにある
ふあうすと2016年12月号「明鏡府」掲載


[短歌]夕暮れに似た美しい名前にはどんな名字が出逢いましたか

名字をあててイニシャルの変化を笑い合ったのはむかし。美しい名前の響きに、いまはどんな幸せが飾られているのだろう。もちろん、知りたくなんてないのだけれど。

夕暮れに似た美しい名前にはどんな名字が出逢いましたか


[短歌]羽を縫う君は確かな将来をずっと信じていてくれたのに

優しすぎることに不安を覚え、疑いを向けては壊してしまう、ひとりの弱さと、ひとりの傷と。どんな風に未来を夢見てくれていたのだろうと、聞いてみたい気もして聞けなくて、微弱な心の振動を今日も、歌のなかに仕舞っては生きていこうとしている。

羽を縫う君は確かな将来をずっと信じていてくれたのに


[短歌]咲くために地面を選ぶこともあるいまが底ならあとは空だね

一面の落葉やドングリたちは、土の冷たさを覚えながら、いつかまた空に向かっていくエネルギーを蓄えようとしている。底のような場所にいて、視界を奪われたとしても、もう、それ以上の闇はないのだということを伝えるのは、僕の言葉か、僕の背中か。

咲くために地面を選ぶこともあるいまが底ならあとは空だね


[短歌]遠回りばかりをさせた灯火の歌に煌めく むかしむかしは

灯火のつもりでいたけれど、それは結局、遠回りを示しただけで、しかも、未来には届かないむなしい道のりだった。「ほんのわずかでも意味があったよね」とはおこがましく、かつての灯火は、歌のなかにかすかな意味を煌めかせようとする。

遠回りばかりをさせた灯火の歌に煌めく むかしむかしは


[短歌]木枯らしが来て右へ行くことにした君の時計は加速していく

ぼくは左へ、あなたは右へ。溝に吹く風は冷たくて、それぞれの背中は小さくなっていく。幸せを願っても、その幸せが加速していると、なんだか複雑な気持ちにもなってみたり。晴れ時々くもりのような時間に、自分の影を置いてほしいと思う僕の卑怯について。

木枯らしが来て右へ行くことにした君の時計は加速していく