月別アーカイブ: 2016年8月

[短歌]まっすぐに影響されるまっすぐで世界が丸くなりますように

恩送り、Pay it forward。いいことをされた、だから、いいことを与えようという考え方が好き。親切は循環する。「許す」とか「与える」とか。巡って、僕は輪のひとつにあることを自覚する。生かされているという言葉の意味を、年々、実感するようになってきた。

まっすぐに影響されるまっすぐで世界が丸くなりますように


[短歌]カタチにはならない言葉たちだけどお届けします箱、満ちるまで

いろんな仕事がある。カタチのないものには値札を貼る場所もなくて、僕たちは時々、隣のショーウインドーに飾られた綺麗な石たちを羨ましい気持ちで眺めて過ごすことがある。しばらく腐って、そしてまた「それでも僕は」と言葉を研磨し始める。心に触れるまで、その箱が満ちるまで、引き出しの尽きるまで夜を越えていく。

カタチにはならない言葉たちだけどお届けします箱、満ちるまで


[短歌]運命の人を海月と知らされた夏の終わりの携帯電話

「なんとか商法」というものに騙されていると思うのは周囲で、案外、本人たちは満足して購入していることが多い。残酷な真実を突きつけられたその後よりも、甘い夢に溺れて果てていくほうが幸せなのではないかと思ったりするがどうか。知ってしまった以後の瘡蓋は永遠に再生しない。

運命の人を海月と知らされた夏の終わりの携帯電話


[短歌]僕たちと呼び合えるのは奇跡だと確率論の甘いお話

僕たちと呼び合えるのは奇跡だと確率論の甘いお話 #短歌 #短歌フォト #フォト短歌 #詩 #言葉

Nishibata Yasutakaさん(@bata)が投稿した写真 –

あべのハルカスの300mの展望台から眺めると、僕たちはミニチュアであることを思い知らされる。ミクロとミクロが巡りあう奇跡、ここまでとこれからを甘い物語にしてお話をしてみたくもなる。偶然は必然になって、必然は永遠に。生きてこそ、動いてこその、いま、ここにいるということ。

僕たちと呼び合えるのは奇跡だと確率論の甘いお話


[短歌]きょうという日は特別な予感して右脳を寄せるカウンター席

右脳だとか左脳だとか、難しいことはよく分からないけれど、同じ側同士で喋っているような感覚は好きだし、違う側の自分を必要とされる感覚も好きだ。「いま、僕はどっちの脳で話をしてるんですかね?」「大した話でもないし、脳みそ、止まってんじゃない?」なんて言われて笑い合う、もちろん、そんな感じも嫌いじゃない。

きょうという日は特別な予感して右脳を寄せるカウンター席


[短歌]大漁のいつかを見せてやれなくて僕だけの聞く風の往来

「任せておけ、こんなにたくさん釣ってやるからな」だとか「将来俺は、必ずおまえを幸せにする」だとか。大きなことを言って、大きなことで疲れさせて、いつのまにか独りにもどって風の音だけを聞いている。言葉にどれだけの責任をもって行動に移したのだろうかと、夢の残骸たちに風が吹き抜けていく。

大漁のいつかを見せてやれなくて僕だけの聞く風の往来


[短歌]つなぐ手を伝う涙もあるでしょう弱さの夜を過ごしましょうか

優しさに満ちた空気だけを交換しあうよりも、弱さを見せ合って共有できるようになることを「強い」と言うのだろうと思う。ときには理由を聞いたり、ときには黙ってうなずいていたり。底を抜けたら、もう、同じことでは泣かせたくないと強がってみたり。

つなぐ手を伝う涙もあるでしょう弱さの夜を過ごしましょうか


[短歌]焦点をぼかして向かう終章は乾いた声で笑いあったね

焦点をぼかして向かう終章は乾いた声で笑いあったね #短歌 #短歌フォト #フォト短歌 #詩

Nishibata Yasutakaさん(@bata)が投稿した写真 –

傷付け合うころを過ぎたら、乾いた声になってなんでも話せるようになった。Lの道を行き、Rの道を行く、行き先の違う切符を最後に、約束はただの思い出になった。見せた背を何度思い出してくれだろう、なんて考えるのは、いかにもフォルダ保存の好きな男らしいというか。

焦点をぼかして向かう終章は乾いた声で笑いあったね


[短歌]教科書に載らないような僕らにも符合に満ちる歴史があった

東から昇って西へ帰っていく太陽のことは誰でも知っていて、学校帰りにバーガーショップに立ち寄っては笑うふたりのことは、今では誰も思い出すことはない。それでも宇宙の歴史を構成したには違いないのだと、時々、眩しい顔をして昔を思い出す。

教科書に載らないような僕らにも符合に満ちる歴史があった


[短歌]曖昧なままでは嫌と言う君の帰っていった梅雨の跡形

曖昧なままでは嫌と言う君の帰っていった梅雨の跡形 #短歌 #短歌フォト #フォト短歌 #詩 #梅雨

Nishibata Yasutakaさん(@bata)が投稿した写真 –

曖昧は正義にも悪にもなる。ボードゲームのようなもので、カードを出すタイミングを間違ってはいけないだけだ。求められることには明確で、求めることには曖昧で。確率的には、そんな風にして生きていけば良かったのかもしれない。それができない詩人は「勇気がなかった」という曖昧な言葉にして気持ちを語りがちだが、実際には「卑怯」と言われて背中を見送っただけだ。

曖昧なままでは嫌と言う君の帰っていった梅雨の跡形


[短歌]置いていく荷物を決めて休もうかラムネ瓶には迷いがないね

両手に荷物を抱えたままで走れるわけがなく、ここに置いていこうと決める勇気。迷いなく瞬時に判断できるひとは、守りたいものをちゃんと決めているひと。損得で順位を決めない、ラムネ瓶を透かすように未来を見据えていく。僕は透明度の低い瓶を手に、足踏みばかりをして。

置いていく荷物を決めて休もうかラムネ瓶には迷いがないね


[川柳]王様ははだかになって言いました

「立場」や「肩書き」がひとを勘違いさせてしまうことがある。たとえば「委員長」だとか「経営者」だとか。その立場だから「教えよう」とするのではなく「教えていただこう」となれる人は美しい。王様、服をお忘れではないですか、と言える雰囲気をつくること。リーダーの役割とは。ワンマンなひとを見ていて思うことのあれこれ。自分も然り。

王様ははだかになって言いました
ふあうすと2016年5号「明鏡府」掲載


[短歌]放課後の無限のままを登ったら泣いて笑ってまた笑えたね

青の時代には数えきれないくらい涙をこぼした、そしてその何百倍も笑って過ごした。涙の原因は覚えているのに、笑った理由は覚えちゃいない。きっと、どうしようもないくらいにバカバカしいことで笑い合えたんだろうね。放課後の永遠を思い出しては、作り笑いのうまくなった自分の大人顔に拳を突き立てたくなる。

放課後の無限のままを登ったら泣いて笑ってまた笑えたね


[短歌]言わなくちゃいけないことを言った後ひとりの空を見上げて過ごす

喜ばれたくて生きているのに、いつのまにか、叱られないような生き方のための選択を繰り返してしまうようになる。それも必要なことだと割り切り顔で言葉を選ぶ自分の、本当の本当の本当のところは何なのだろうとしばらく、ケータイを切って考えてしまうことがある。

言わなくちゃいけないことを言った後ひとりの空を見上げて過ごす


[短歌]星の降る日を祈ったり笑ったり願ったりして踏んだアクセル

星が雪になることを祈ったり、星が川になることを願ったり、僕たちは季節ごとに星の在り様を期待する。この歌を詠んだのは七夕の日で、この歌を振り返るのは星が流れる日の夜。街と空との境界から上には、古代から浪漫だけがあって、お互いの希望を笑い合っては重なり合う気持ちの温度を確かめ合って生きてきた。

星の降る日を祈ったり笑ったり願ったりして踏んだアクセル


[短歌]まだあ・うんにはなれなくてなりたくて呼び捨てにする青の試み

ふたりの距離を縮めようとする青春たちの試みは微笑ましい。僕は無責任にアドバイスを送ったし、いざ、自分のことになると、とてもそんな勇気を持つことはできなかった。初々しさに満ちた一生懸命の物語。なのに、どうして、千切れたページばかりの思い出になってしまうのだろうね。

まだあ・うんにはなれなくてなりたくて呼び捨てにする青の試み


[短歌]神様の戸に届くまでローソクの照らしてくれる靴は五線譜

ところどころ、神戸には、不自然に美しい一画がある。1月の神戸は花がよく売れるという句を詠んだことがあるが、いまも続いている祈りの黙祷たちは、もう、冬の神戸の景色になってしまった。止まったままの時計を横目に、赤いローソクを見上げて寄り添う恋人同士。レクイエムとラブソングの交錯しあって、それぞれの時間が過ぎていく。

神様の戸に届くまでローソクの照らしてくれる靴は五線譜


[短歌]朝、霧がかかっていても夕焼けに間に合うように風が来るから

僕の好きな人はかつて「晴天を誉めるには日没を待て」という慣用句を、「晴天を誉めるなら夕暮れを待て」というタイトルにして歌った。今を最高と思うのも最低と思うのも、終わりが来てみなければ分からない。いくつかのイライラは、僕のプライドやタイセツに触れてくるからで、どん底の擦り切れた痛みに耐えながら、今ではない風を待って佇むことにする。

朝、霧がかかっていても夕焼けに間に合うように風が来るから


[短歌]幾重にも無傷の君を祈りゆく火のトンネルをくぐって吾は

「チカラになりたい」という言葉が浮遊している時点で、何も動くことのできていない無力な自分を意味する。祈ることがすべてで、祈ることだけ。守るために傷付いてもかまわないと思った拳も、拳を振り上げる真似をしたポーズなのかもしれない。思うことは幾つあっても、幾つを過ぎても同じ場所に留まる。

幾重にも無傷の君を祈りゆく火のトンネルをくぐって吾は