月別アーカイブ: 2016年7月

[短歌]原石を探しに行った自転車を最後にどこで見かけただろう

原石を探しに行った自転車を最後にどこで見かけただろう #短歌 #短歌フォト #フォト短歌 #詩

Nishibata Yasutakaさん(@bata)が投稿した写真 –

部活動のない放課後は、自転車で世界を巡った。派手な音のするブレーキに、僕たちは加速を笑い合ってサイダーで休んだ。海は反射して、原石の未来を無限に輝かせてくれていたのだろう。火を孕んだ石を掴んだころから、僕たちはカーブを曲がり切れなくなってしまう。自転車を見なくなって、あの日の道に、サイダーの瓶だけが割れて残っている。

原石を探しに行った自転車を最後にどこで見かけただろう


[短歌]進路室では鳥にでもなれました 拝啓きみはお元気ですか

進路室では鳥にでもなれました 拝啓きみはお元気ですか #短歌 #短歌フォト #フォト短歌 #詩

Nishibata Yasutakaさん(@bata)が投稿した写真 –

大リーガーになってホームランを打つことも、きみを世界で一番幸せにすることも、自由に夢を見ていられた進路指導室。いくつかの壁と逆風があって、僕たちは妥協と妥当の意味を知るようになる。夢のてっぺんにいたはずの憧れのことは、もう、何処にあるのかさ知らない。

進路室では鳥にでもなれました 拝啓きみはお元気ですか


[短歌]「にしばた」か「にしはた」かって聞かれますここに答えを置いておきます

「西端康孝」と縦書きしてみる。「西端」が横に広く「康孝」が縦に長いのでバランスがとりにくい。このことが理由で好きになれなかった自分の名前も、父が亡くなってからは、「孝彦」の一文字があることに安心できるようになった。「にしばた」なので「ばたちゃん」と呼んでもらえる。ためしに「はたちゃん」と声に出してみると、すーっと抜けていってしまうような感じがした。にしばたで良かったな、と思う。

「にしばた」か「にしはた」かって聞かれますここに答えを置いておきます


[短歌]主役にも寝ていてほしいときがある舞台は今日で終わりはしない

主役にも寝ていてほしいときがある舞台は今日で終わりはしない #短歌 #短歌フォト #詩 #sakura

Nishibata Yasutakaさん(@bata)が投稿した写真 –

「無理はしないで」という言葉は、壁に投げた豆腐のようになって意味を成さないことを知っている。無力な言葉の残骸たちに、僕はチカラが欲しいと願う。大切なひとの、脳にも、片腕にも、片脚にもなれないとき、粒子は、宇宙を漂って祈るばかり。たとえば、僕のひっとぽいんとだとか、たとえば、ぼくのらいふぽいんとだとか。どんな便利が現れても、僕たちはまだ、それを分け合う術を知らない。

主役にも寝ていてほしいときがある舞台は今日で終わりはしない


[短歌]追憶の駅で歩調を遅くする伝えたいのは湿った本音

追憶の駅で歩調を遅くする伝えたいのは湿った本音 #短歌 #短歌フォト #詩 #駅

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電車に乗ってしまえば通話をすることが憚れる。乗る前や降りたあと、すぐの、繋がりたくなるような衝動は何なのだろう。カラフルな絵文字やスタンプを添え合う恋人たちの表情はとても生真面目だ。顔に出さずに、声を出さずに結びつき合う電波たちの不思議。それを知っていて僕は、余計に、生の声で共感を求めたがるのかもしれない。ほとんどは負を帯びた言葉、なのにね。

追憶の駅で歩調を遅くする伝えたいのは湿った本音


[短歌]こい雨に沈まぬような屋根となれ予報どおりに風は冷たい

こい雨に沈まぬような屋根となれ予報どおりに風は冷たい #短歌 #短歌フォト #詩

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最悪の事態を想定しながら最善を尽くす。期待してガッカリするよりも、思ったよりも良かったと思える結果を繰り返した方が自分には楽で、いつも心はそんな風に構えている。時々、そんな自分でも、期待を見せて期待以上を目指すことがあって、夢の斜面、本気の本気の本気なんだなと思ったりもする。自分の本気、それは鏡があって見えてくるもの。鏡はどうだ、笑っているか。

こい雨に沈まぬような屋根となれ予報どおりに風は冷たい


[短歌]受け入れる器になっていたはずの背骨に足したのは火のパーツ

受け入れる器になっていたはずの背骨に足したのは火のパーツ #短歌 #短歌フォト #詩

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語尾を曖昧にはしない。日付を明確にする。瞬間最大風速でなく、持続可能なことを継続する。背骨のあたりを焚きつけて行動で示していくことを本気なんだと思ってる。そうして、やりつくしたところで「まだまだだよ」と語ってみる。本気を余力で語る人の格好良さに憧れて走り出す。そんな風でいいと思うし、案外、そんなくらいであったほうが良いんじゃないかなと想像する、夏、風の丘にて。

受け入れる器になっていたはずの背骨に足したのは火のパーツ


[短歌]野良猫に名前を付けた記念日を覚えています 初恋でした

野良猫に名前を付けた記念日を覚えています 初恋でした #短歌 #短歌フォト #詩 #猫 #cat

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家の近所の海岸は、バーベキューや海水浴で訪れる人たちがたくさん。複数を一枚にして撮りあう様子を眺めていると、なんとも微笑ましくて羨ましくなる。夏の終わりはやがて訪れて、また、静かな海に戻っても、この光景を永遠に共有しあえる同士でありますように。

野良猫に名前を付けた記念日を覚えています 初恋でした


[短歌]カムチャッカまでリレーするボールには「守り抜いた」ときりんを描く

この地球ではいつもどこかで朝がはじまっていて、僕らは朝をリレーして、交替で地球を守りあっている。遠くに聞こえるベルは警鐘ではなく、平和の証。そんな風にして世界の繋がっていることを感じさせてくれる谷川俊太郎さんの朝のリレーは大好きな詩。赤いボールの沈む空を眺めながら、カムチャッカの若者に、いつまでも僕たちがきりんの夢を渡していけるように祈った。

カムチャッカまでリレーするボールには「守り抜いた」ときりんを描く


[短歌]逃げ込んだはずの場所さえ濡れていて電池の切れたスマホをにぎる

逃げ込んだはずの場所さえ濡れていて電池の切れたスマホをにぎる #短歌 #短歌フォト #詩

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どこに逃げたとて、誰に助けを求めたとて、自分で解決しなければいけないことがある。あとまわし、さきおくり。えいやっとする勇気が持てなくて、状況は悪くなるばかり。いくつかのプレッシャーが悪循環して、立ち止まっては、即決をする人たちを羨んでいる。強さはどこに。

逃げ込んだはずの場所さえ濡れていて電池の切れたスマホをにぎる


[短歌]締切の迫る原稿用紙にてヒカリの欲しいツキのない夜

締切の迫る原稿用紙にてヒカリの欲しいツキのない夜 #短歌 #短歌フォト #詩

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8月31日の夜を毎日繰り返し走っているようで、「次」が積みあがる封筒やメールが来ないことを願ってみたり。この仕事で生きていきたいと願ったころを思えば、なんとも贅沢なことを言っているのは百も承知。「前」と同じようでは芸がなくて、「次」のための光を待っている。まだツキの遠い、重たい指先。

締切の迫る原稿用紙にてヒカリの欲しいツキのない夜


[短歌]背伸びしたあたりで叶うことがある ときには泥の味も覚えて

背伸びしたあたりで叶うことがある ときには泥の味も覚えて #短歌 #短歌フォト #詩

Nishibata Yasutakaさん(@bata)が投稿した写真 –

「自分なんてどうせ」と決めつけてしまえば、頭は天井にぶつかる。「あんな風になってみせる」と決めても、逆風に泥の混じることもある。走るのも諦めるのもそれぞれ。すべてが叶わないから、次は叶うのかもしれないと思う、そうやって動き出す、続ける。そんな人が好きで、そんな風でありたい。

背伸びしたあたりで叶うことがある ときには泥の味も覚えて


[短歌]おっさんを演じて生きているひとの涙を聞いた海はプリズム

おっさんを演じて生きているひとの涙を聞いた海はプリズム #短歌 #短歌フォト #詩

Nishibata Yasutakaさん(@bata)が投稿した写真 –

プロスポーツ選手に憧れた人もいれば、アイドルを目指した人もいたことだろう。いつしか様々な現実を知るようになって、役割を受け入れて生きるようになっていく。彼も、彼女も、僕もそう。同じような匂いをさせる人の遠い目に映るものを、あえては聞かず、透明なままの沈黙を察して海は静かに。

おっさんを演じて生きているひとの涙を聞いた海はプリズム


[短歌]それぞれの月にバトンを渡されて影ができたら指切りしよう

それぞれの月にバトンを渡されて影ができたら指切りしよう #短歌 #短歌フォト #詩

Nishibata Yasutakaさん(@bata)が投稿した写真 –

夕焼けにバトンを渡された月の下でそれぞれの約束が始まっていく、砂浜、公園、ベンチ。夜に落ち着いていくような情景は青春にも大人にもあって、皆、少し未来と遠い未来を確かな言葉で契りあっている。破られた約束に負った傷があっても、何度だって約束をしたがるのは、それが僕を強くする根源であることを知っているから。指切りの余韻は甘くて響く。

それぞれの月にバトンを渡されて影ができたら指切りしよう