月別アーカイブ: 2016年2月

[川柳]貸しボート よかった頃を置いたまま

ボートを借りて池の真ん中に漕ぎ出せば、すぐに昔に戻れそうな気がする。すぐに昔に戻れそうな気がしてしまうから、借りることを躊躇もしてしまうのだけれど。切なさを伴うむかしむかしのあたりには、いろんなスイッチがあって近付くのは危うい。見ない振りをして、ボートの横を過ぎていく。アヒルたちは短針のようにのんびりと春を浮かんでいた。

貸しボート よかった頃を置いたまま
ふあうすと2016年3月号「明鏡府」掲載


[短歌]それだけのことをしたのだ死になさいさあ死になさい今すぐに

「その程度の謝罪で許されると思うな」「人間としてそれはどうなんだ」と糾弾を続ける正義が、更生の機会を与えようともしない。自分よりも劣る理由を見つけては、相手にも家族がいることを忘れて攻撃を止めない。そしてきっと、こういうことを書く自分の内面にもまた、同じようなナイフが存在する。彼も罪人、我も罪人。とがめることよりも許せることのできる人間に成長していきたい。

それだけのことをしたのだ死になさいさあ死になさい今すぐに


[短歌]宿題の終わりましたという波を歪みの中のアインシュタイン

アインシュタイン予言の「重力波」、米で初観測というニュース。アインシュタインが残した宿題を現代の科学者たちが解き明かしたらしい。素晴らしいニュースには違いないのだろうけれど、その凄さがなんとなくしか理解できない自分の脳みそが悲しい。想像もつかないほど「すごい人たち」が「すごいすごい」と言い合ってる光景に、同じ時代に生きていることを(よくわからないままに)感動しながら眺める。

宿題の終わりましたという波を歪みの中のアインシュタイン