月別アーカイブ: 2015年11月

[俳句]夕暮れて鴉のための色となる

初冬の夕暮れは人や街を真っ赤に燃やす。冷たい風とのコントラストの上を、鴉たちが鳴きながら帰っていった▼12月31日の寒さと1月1日の寒さは、1日しか違わないのに感じ方が異なる。季節や時季の持つ色の不思議を思う。

夕暮れて鴉のための色となる


[短歌]蒲鉾の値段が上がる頃に舞う鳥よ 世界に線はあるかい?

年の瀬になると蒲鉾の値段が上がり始める。慌ただしくも、慌ただしさを生きていると、今年もどうにか生き長らえることができたのだと安堵にも似た気持ちになっていく。世界は何度だって、平和なままに繰り返される方が良い。

戦争ばかりがあっちとこっちの線ではない。相手の信条や価値観、考え方の違いを個性として認めあえるかどうかということ。僕は時々、自分を認めてもらえなくて不貞腐れてしまうことがある。それだって結局は「認めないという相手の考え方」なのにね。世界は広くて、僕は小さい。

蒲鉾の値段が上がる頃に舞う鳥よ 世界に線はあるかい?


[川柳]白い紙たちは希望を待っている

本屋や文具屋に新しい年の手帳たちが並ぶ。希望の白か、悲哀の黒か、紙の一枚一枚に、誰のどんな色が描かれていくのだろうと想像する。願わくは踊る文字たちの詰まったそんな一年を。未来に向けて立つとき、僕たちは同じ線の上から遠くを眺めている▼振り返るよりも、助走のための一か月にしたい。赤と緑の景色、聖なる音と光に満ちて、眩しくて優しい街のなかで疾走。

白い紙たちは希望を待っている
ふあうすと2015年12月号裏表紙


[短歌]特別な数字が今はもうただの記号になって過ぎていきます

月末や年末に向かっていく、過ぎていくイチニチ。歴史にはどんな事件や事故があって、どんな祝福があったのだろう。特別を詠んだ詩人もいまはむかしの。記号に気付いて、気付いていないような顔をして、数字ばかりの未来を憂う。物語は優しい服を着て揺れるから意地悪。

特別な数字が今はもうただの記号になって過ぎていきます


[川柳]呼び鈴を押して恋せよ少年よ

今の金利では100万円を銀行に預けても、一年で200円の利息にもならない。リスクとリターンの関係は比例していて、お金や時間、勇気といった「費やす」ことに多くを割いた者だけが見ることのできる世界がある。何にどんな風に投資できたか、継続できたか、決断できたか、結果、どうだったのか。夕暮れの濃度が増すこの季節にはこうして振り返って過ごすことが多くなる。反省は未来への種。勇気を携えて少年は、どんなベルを鳴らし続けるのか。

呼び鈴を押して恋せよ少年よ
ふあうすと2014年3月号「明鏡府」掲載