月別アーカイブ: 2015年7月

[短歌]世界から温度の消えていくような言葉の裏の雨が止まない

深く考えすぎても仕方ないのだけれど、沼の底のザラザラとした感触を確かめてしばらくを過ごしてしまうことがある。自分という人間の気難しさというか、面倒臭さというか、自分を放り投げたくなる衝動。思うようにゲームが進まないとき、すぐにファミコンのリセットボタンを押した幼少の頃を思い出す。

「こんな時の川柳や単価なんですよね、僕にとって」と自分語りをして、短歌を単価と書き間違えていることに気が付いた。詩を詠む人間であり、商売を営む人間。「こっち」で落ちてばかりもいられず「あっち」に戻ることにする。それぞれに待ってくれている人がいるというのは幸せなことだね。

世界から温度の消えていくような言葉の裏の雨が止まない


[川柳]梅雨明けのもう動かない蝉の骸

空が晴れたら一番に飛び出したがるけれど、ぬかるんだままの土に滑っては大怪我をしてしまうことがある。夏の本番が来る前に、もう空に腹を向けた蝉が転がっていた。どんな夢を見ていたのだろう。どれだけ生きたかったのだろう▼経営者になって10年が過ぎた。経験相応の慎重さは、大胆な行動へのブレーキになりがちでよしあしだ。逢えなかったものはいくつ、遭わなかったものはいくつ、数えられるわけのないものに指を折っては、また、空虚な時間を重ねてしまう臆病がいる▼夏の真ん中にひとり、雲の流ればかり見ている。

梅雨明けのもう動かない蝉の骸
ふあうすと2015年8月号裏表紙


[短歌]新しい姓は知らない空の下いつか見ていた夢の残照

駅前に伸びていた古ぼけたビルたちはもう、記憶の中にしか存在しない。生まれ変わる未来、新しいコンクリートに僕たちは少しずつ馴染んで、また、誰かの思い出で彩られていくことを微笑ましく眺めていくことになるのだろう。近いようで遠くなっていく欠片のひとつひとつ、重機たちが地面を揺らすたびにグニャリと歪んでいくような気がして、刹那、胸の焦げる息苦しさに襲われた。

新しい姓は知らない空の下いつか見ていた夢の残照