月別アーカイブ: 2014年12月

[川柳]目を閉じてみる目を閉じて聞く背中

工事現場の壁のままなら、記憶はガラスの瓶に透けて生きる。息吹に似た風はいずれ、僕たちをどんな風に壊して永遠の欠片にしてしまうのだろう。街は止まらないで、いつかを淡くしていく。父の店の跡地にコンクリートが生えていた。

目を閉じてみる目を閉じて聞く背中


[川柳]からっぽのなかで光を結っていた

詩なんてアクを掬いとった人生の上澄みね、と表現したのが谷川俊太郎さん(世間知ラズ)。色々な形容詞や名詞、副詞や動詞のパーツを組み合わせては、時に汚れたままの、時に汚れを上手に隠しながら、事実や空想のアレコレを今年も詩歌に表現してきた。どんなアクが抜けて、どんな僕が残ったのか、僕は僕自身を知らない▼現実から逃避した遊戯であると揶揄する人もいた、現実に生きるための束の間であると語る詩人もいた。抜け殻とも、理想であるともいえるこの定義のない世界に来年も、僕はどんな風にして指を折っていくのだろう。

からっぽのなかで光を結っていた
ふあうすと2015年1月号裏表紙


[川柳]綿菓子になってくれない また笑う

不器用な人といるとほっとする、器用な人といると安心する。つまり、すなわち、同じだから共感できるし、違うから助けてもらえる。それだけのことで、僕たちはそれぞれ、色々な凹凸のピースになっているんだろうと思う。無色なようでいて、背景を構成する空の一部なのだとすれば、僕は君はとても大きな役割を担うね。そんな風に考えられるのが調和っていうことなんだろうな、と、不器用で上手には作れなかった、綿菓子の機械を眺めながら指を折る。いつも笑われて、いつも作ってくれたこと。

綿菓子になってくれない また笑う
ふあうすと2014年10月号「明鏡府」掲載


[短歌]冬型の気圧配置に浮かぶ月近くて遠いあいだを想う

冬の風がやってきて、黄や赤が街を舞っている。空気は洗われて、昼の空に浮かぶ月はいつも以上に白く僕を見ていた。どれだけの風の強さがあっても、月はじっとしてそこを動かない。こんなに近く見えるのに、あんなに遠いことを思い知る瞬間。そうして、それでも、簡単に動くはずはないものを動かしたくなるのが人間であるということ。距離を思ってはため息、距離を想っては吐息。

冬型の気圧配置に浮かぶ月近くて遠いあいだを想う