月別アーカイブ: 2014年9月

[短歌]砂浜の粒は僕らを聴いていたもうその粒は探せないけど

角川短歌26年10月号では通巻800号を記念して「角川短歌賞受賞作品集」が付録になっている。第59回までの歴代作品が一冊の本にまとまっているのが素敵。2011年に受賞した立花開さんは当時高校生で、50句の中に詰まった眩しさと切なさは僕の心の芯にきーんとむかしむかしを運んでくれた。「やわらかく監禁されて降る雨に窓辺にもたれた一人、教室/立花開」「ウォーリーを探すみたいにグラウンドから探し出す君の頭蓋/立花開」とか、そうだよね、そうだったな、なんて、青の体操服を教室から探した純情を思い出しながら僕はしばらく遠くに触れた。もう、色だけの残った、そんな遠くのことなどを。

砂浜の粒は僕らを聴いていたもうその粒は探せないけど


[短歌]窮屈な箱を踏んでる音のする月末が来て風の空砲

日曜日の朝は日曜日っぽい顔をして空気をゆるくする。同じように給料日の時期の街はなんとなく弾んでいて、あちこちにボリュームを上げた音符たちが舞っていたり落ちていたりする。目には見えなくて感じる空気、毎度、羨ましく眺める僕の肺は窮屈で、咳き込みながら残高を見つめる。

窮屈な箱を踏んでる音のする月末が来て風の空砲


[短歌]誤解っていうのもきっと泥色の靴を履いてる僕が悪いね

青く澄んだカバンを持っていたとしても、それがくすんで見えたのなら僕の着ている服のせい。君の眼鏡に問うよりも、自分に原因があるのだと決めた方が早くて楽だね。人はそれぞれ、そんな風に決める誰かの考えも否定はしない。人はそれぞれ、こんな風に生きる自分のことも大切にしたい。

誤解っていうのもきっと泥色の靴を履いてる僕が悪いね


[川柳]爆撃の空 焦げていく赤トンボ

爆撃の空 焦げていく赤トンボ

「会社をこんな風にしていきたい」とか「あんな句が書けるようになりたい」とか。秋の夜長に色々を想像している同じ星の上に凶器は降っていて、土は血を吸い続けている。平和であってほしいとは思っても、平和にするための一歩目を僕は知らない。そしてこの秋もきっと「秋刀魚が美味しい」なんて呑気な夜を過ごしては、どこかの国の涙を忘れてしまうのだろう。平和はいつも空気のように当たり前で、水のように汚れやすい▼会議では行動することを決めて、決めた行動には日付を入れようという話をした。星の平和にはいつ、日付が入るのか。

ふあうすと2014年10月号裏表紙


[短歌]まだ夢に逢えない父の誕生日褒めてほしくて風の三叉路

まだ夢に逢えない父の誕生日褒めてほしくて風の三叉路

「亡父」と書くのに抵抗があって、いつまでも父と一文字で表現してる。ずっと夢に見ないのはそれだけ近くにいることの証だと思っているけれど、いつも商店街をふらりと出かけて行ったように、気ままに誰かと話し込んでばかりなのかもしれない。「僕の商売はどう?」と話しかけたらどんな返事をくれるのだろう。「まだまだ」のあとにヒトコト、優しい何かをくれるんだろうか。9月14日、父の誕生日、秋が早くて、切なくて。


[川柳]試食したあとの会釈にコツがある

川柳誌ふあうすと2014年10月号の課題吟「巧み」の選者を務めた。選ぶ立場になって気付くことのたくさん、そしてますますたくさん詠みたくなるココロ。言葉を転がしてみたり言葉に転がされてみるのに秋は最適。いろんな世界を17文字と31文字で表現してみたい。以下、選者の言葉として寄稿した文章を掲載する。どの句を選んだかはどうぞ本誌をお楽しみに。

選者である僕の着想を巧みにかわした、様々な思惑に満ちた作品たちと対話させていただきました。

俳句はモノ、川柳はヒト。情景を説明して終わるのではなく、そこに存在する人の気配や考え方、表情までを伝えることが出来るとハガキの山から一枚が光り始めます。これは他の誰かも思い浮かぶかもしれないと感じた「第一着想は捨てて」みる、事実を直接伝えるのではなく「想像を生ませる比喩」を用いる、「大胆なオノマトペで物語に軽さや重さを」付け加えてみる。「捨てる」の次に表現の工夫があるとハガキを選る手は止まって、しばし想像の世界に飛んでいきます。一方、最初から言葉や表現にもたれすぎてしまうと作為性を感じてしまうので要注意。日常のなかで「見つける」、そして「捨てる」。最後に「工夫する」。この順序が感じられた作品ほど余韻が残りました。

捨てる勇気、選者を信じる勇気。選ばれることが詠む目的のすべてではありませんが、時々は表現の「巧み」で選者に変化球を投げ込んでみるのも楽しいものです。そして僕ももっと、右へ左へ大胆なボールを投げてみようと思うに至りました。選ぶ立場を経験して、詠む楽しさを改めて知ったこと。こんな機会をいただきましたことを心からお礼申し上げます。また、お逢いできますことを。

軸吟
試食したあとの会釈にコツがある


[短歌]脳ミソが足りずお金も足りませんビールも飲めず8月の馬鹿

脳ミソが足りずお金も足りませんビールも飲めず8月の馬鹿

「飲みにいきませんか」と自分から誘うと(あああ、本当は自分なんかと過ごしたくないだろうに時間を奪ってしまっているのではないか)と考えてしまう性質なので、誘われると素直に喜びます。ただ「話しておきたいことがあるから」と真剣に言われると(ものすごく怒られそうな予感がする)とビビってしまうアカンたれでもあります。「説教だったら今言ってくださいお願いします!」「ええい面倒なやつめ」 ― つまり「説教なんてしないので、ただ飲みに行きましょう」と言ってもらえると一番落ち着きます。そこんとこよろしく。あー8月、色々あったなぁ。なぁ。