月別アーカイブ: 2014年1月

[短歌]言うまでもなくこの空は続いてる泣いてもいいよ泣いてほしいよ

言うまでもなくこの空は続いてる泣いてもいいよ泣いてほしいよ

北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会が活動支援金を募るため配布しているブルーリボンバッジ。このバッジの青さは、海に隔たれた家族同士が空で繋がりあい、いつかまた再会することを信じて込められた祈りの色だという。地球儀を辿ればほんのわずかな距離も、想いが叶わないままの時間はあまりにも長い。気丈に生きる人たちに、どうか涙とどうか笑顔の訪れる未来を想って。


[短歌]絵葉書のように優しい空でした過ぎて気付いた校庭は青

絵葉書のように優しい空でした過ぎて気付いた校庭は青

野球部は簡単にボールを打ち上げてしまい、陸上部は走り高跳びのハードルを上げられない。音痴な吹奏楽部は、間延びした音を時々鳴らしている。それでもみんな、叶うことだけを信じて夢中の顔をしていた。遠くなっていく景色、戻れない校舎。透明な空と仲間たちを思い出しては、今日も名刺交換の仮面を生きている。

NHK短歌2013年5月号「校庭」佳作入選


[川柳]絵心はないけど風に ほら 未来

絵心はないけど風に ほら 未来

「論理的」なのも大切だし「合理的」なのも大事。「理屈」や「理論」ってのは重要なんだろうし、「真面目」であることは何より。ただ、あとはそれに、雰囲気だとか夢だとか、「よーし、今を頑張ろうぜ」という空気のようなものを纏うこともリーダーの仕事なのかな、と思ったりする。いろんな未来を描いたり、いろんな未来に走ったり、躓いたりして、困ったりして。

ふあうすと2012年4月号「明鏡府」掲載


[川柳]引越しの跡にレモンが染みている

引越しの跡にレモンが染みている

この原稿を書いている今は、まさに事務所移転の最中。荷物の減っていく空間に、会社の代表を務めるようになってからの10年の痕跡がある。嬉しかったこともそう、悔しかったこともそう。若かったからできたこともあるのだろう。それはまるでレモンのような時間だった▼悲哀や苦悩は、新しい土地の養分となって鮮やかな花を咲かせる。そんなイメージを強くして決意した事務所の移転。諸々の手続き、準備、そして投資という手間を抜けた向こうで、僕の毎日はどんな風に詩歌に表されるのか▼ひとつの企業の代表として、ひとりの柳人として、まだ見ない未来に胸が鳴り続けている。

ふあうすと2014年2月号裏表紙


[短歌]学祭のあとに語った夢がある茜色したペンとノートと

学祭のあとに語った夢がある茜色したペンとノートと

「事務所を移転する」と冷静に書いてしまえばそれだけのこと。実際には、投資や準備、決断も必要で、このノリとも緊張ともいえる感覚は放課後に語り合った未来のそれと似ているような気がする。あの頃の夢はいくつか叶って、いくつかはもう散ってしまったけれど、少しは大人になったであろう自分の確実性と、まだ生きている少年の速度を秘めながら、文字にした将来をちゃんと覗きにいきたいと思っている。


[川柳]1月の神戸は花がよく売れる

1月の神戸は花がよく売れる

動かないJR、瓦礫の街を行く代替バス。受験生であることを知った神戸の人たちは「大切な時期に身体を壊したらあかんやんか」と、バスを待つ列の先頭に僕を並ばせてくれた。「受験、頑張ってくるんやで」。

そのあと僕は、神戸よりも少し早く春を迎えて今日までを生きてきた。誰にどれだけの「貢献」や「恩返し」ができているかはわからないけれど、復興の歴史が教えてくれたことは忘れないでいようと思う。

とてもとても寒い冬の朝のことだった。だからこそ知った、そのあとの色々な温度だった。

ふあうすと2010年8月号「明鏡府」掲載


短歌 20140115

何色の絵の具を選ぶつもりでも彼も人なり我も人なり

素敵な人生を歩んでいる人は、自分の道を充実させているだけでなく、他の在り方や考え方も許容しているように思う。人それぞれの色や角度、それを否定するのではなく肯定する。ともすれば妬みという歪んだ感情で自己承認を求めてしまいがちなところ、受け容れる広さを持つことは容易ではない。僕はこの狭さをいつか脱出して、頷いてばかりの生き方を歩めるようになるのだろうか。


川柳 20140104

寄り道もしたし会社も守ったし

ingで守っていかなくちゃいけないこともあるし、willで見据えていかなくちゃいけないこともある。きっちりかっちりやったとて、「真面目すぎて退屈」なんて言われたら、二度とお呼びがかからなくなったりする。不安定な道ではあるけれど、バランスをとりながら、一本をずっと歩んでいくことをちゃんと決めた。「守ったぞ」と大晦日の夕陽に背伸び。孤独なときほど孤独じゃないような顔をしてみせる。自分はこんなに凄いんだぞ、よりも、自分はこんなに助けられているんだぞ、と、道程にある花たちのことを忘れないでおきたい。僕はその花たちに向けられて。

ふあうすと2014年1月号「明鏡府」掲載