月別アーカイブ: 2013年7月

川柳 20130731

屋根を抜け傘を破ってくる鎖

雨になることを教えてくれる、西からの呟きと西から来た電車。傘を持つのが嫌いで、根拠のない「大丈夫」を言い聞かせては車窓の空を見上げてる。傘は身動きを億劫にするし、雨に濡れた荷物はきっと重たいし。何だか色々あって、明日の天気を想うばかり。


川柳 20130728

てっぺんを見せて 明日は晴れるかな

日本中の綺麗なものを撮影して、言葉を添えて生きていく。詩人の誰もが憧れるそんなそんなに、遠いところで頭のてっぺんを見せてばかり。「自分」と「自分たち」の、たった二文字のはるか。添いたくて添えない苦しみで、朝までがすぐに訪れる毎日。


川柳 20130725

セミを捕る日のよく冷えていた麦茶

ランドセルの横に朝顔を抱えるひと、来年はその鉢を抱えられるくらいに伸びているのだろうか。車窓から会話を想像して汗に濡れた自分のシャツを匂えば、「父さん!?」と声に出してしまいそうになる。毎日を生きて、似ているところが幾重にも。夏、そんなオトコたちに、冷蔵庫にはいつも涼のあったことを思い出した。

ふあうすと2013年8月号「明鏡府」掲載


川柳 20130709

やることがなくて想ってばかりいる

今はもう立入禁止の看板の出ている図書館の屋上。僕たちはここで、終わりのない放課後を過ごしては「どっちが先に告白するか」なんて語り合ったりした。そして20年以上が過ぎて、僕は「やらなくちゃいけないよなぁ、やったほうがいいんだろうなぁ」なんて蒼い声を出してる。大人に与えられた時間は、あまりにも短いね。

ふあうすと2013年5月号「明鏡府」掲載


短歌 20130707

ウォーキングでも運動に違いない夏夏夏の空が反ってる

湿らせたタオルを抱いて走るひとの先に、横たわる少年。暑さにやられた様子を見て、過信は禁物だと自重する。空はゆらゆらと燃えているけれど、ほんのひととき、木陰。準備体操のような時間を指を折って過ごしてみる。


川柳 20130705

もういくつ寝ても逢えない二人乗り

明石公園の砂利道を、父の自転車は上手に走った。僕はいつまで経ってもそこを上手に走れなくて、公園に逢いにいくたび、いまでもその不思議を思ったりする。まだ教えてもらっていないことのたくさんあるまま、二人乗り、大きな背中、父にもう。

ふあうすと2010年5月号「明鏡府」掲載