月別アーカイブ: 2013年6月

川柳 20130630

試し書き きみの字体に遠すぎる

ノートとペンが好き。文具屋に行くたび「ブロガー名刺で検索」と試し書きを残してくる。ノート術といった類の特集が好きで、そんな本や雑誌は欠かさず買っている。想いを広げて、未来を予感。降ってくる感覚が好きなのに、長続きしないのは、きっと、憧れの字体に遠すぎる僕の字が原因。


川柳 20130628

手話ニュース また人の死ぬことばかり

手話を習っていたことがある。テレビの音声をオフにして画面を眺めていると、その指は「死」や「殺」を意味してばかりで、僕は狭い世界に閉じ込められたような気持ちになってしまった。淡い花が咲いても、薫る風が吹いても、それを覆い隠してしまう悲哀はずっと。

ふあうすと2008年9月号「明鏡府」掲載


川柳 20130625

市役所で僕がバターになっていく

たらい回しにされて、振り出しに戻って。ちびくろサンボでバターになってしまうトラたちの気持ち。まさか「いつもより余計に回しております」なんてこと、ありませんように。なーんにもおめでたいことなんてなくて、市役所は、僕たちのため息で汚れてばかり、汚れてばかり。

川柳マガジン2009年8月号「ややこしい」入選


川柳 20130622

からっぽになろうか 大の字の空で

授業をさぼって横になっていた海岸。話すことはいくらでもあって、話したことはこれっぽちも覚えていない。そんな無限の時間、いつも共有して、ずっと続くと信じてた。右半分だけ日焼け。僕はその定位置が好きだった。

川柳マガジン2010年8月号「減速」入選


川柳 20130621

行列の出来る病院なら待てる

お世話になっていた病院の入口にテナント募集の文字。「また扁桃炎かい?」といつも優しく接してくれた先生は何処へ? 変わらないと思い込んでるものたちは、いつのまにか、思い出になっていく。今日の雨も、明日の太陽に忘れてしまうことが出来る、出来てしまう。前向きが過ぎても、何か大切なことを忘れたような気持ちになってしまって。

ふあうすと2011年1月号「明鏡府」掲載


川柳 20130620

つまずいた昨日もいつか詩にしよう

影のあった昨日も詩人たちの土に還るのだと思えば、それはいつか花を育む。雨、のち、晴れ、時々曇って、その次の繰り返し。時間は水や光に似て、少しずつ、土をほぐしていく。大丈夫って、何度も自分に言い聞かせてる。大丈夫って、何度も肩を抱いて励ましてる。

ふあうすと2013年4月号「明鏡府」掲載


川柳 20130619

覗かれぬよう届くよう恋 ですね

「誰にも言ったらダメだよ」なんて、届くことを祈って耳打ちしてくる。「わかってるよ」と答えては、君のいいとこ、風に乗せてみたりもして。教室には、いくつ、紙飛行機の軌跡。奇跡を信じて。

ふあうすと2013年7月号「明鏡府」掲載


川柳 20130618

罪人の顔して回る室外機

誰かの人生に影響を与え、誰かの住む故郷を奪った原発事故。そして今度は、過ぎた節電でひとの命に影響を与えてしまう。どこかで分岐して、ここまでを来てしまった。誰の振る未来の旗に、元通りは描いてあるのだろう。暑くて、遠くて、考えることしか出来なくて。

ふあうすと2013年7月号「裏表紙」掲載


川柳 20130617

鬼だって泣くんだ 濡れていた平手

感情のまま怒るのではなく、僕がために叱る声。その時は辛くても、その時で終わらない関係にしてくれる相手の気遣いが嬉しいなぁと大人になって何度も思う。子どものころはそれに気付かなかった。一番泣きたかったのは、鬼の顔をしながら僕をぶった、その人だったはずなのに。

川柳マガジン2011年9月号「本当」入選


川柳 20130615

また次も絵本を読んでくれますか

「もし人生をやり直せるとしたら」と、仮の話はよくする。何度やり直したとしても、この人たちの子どもでありたいし、マカロニグラタンの好きな自分でありたい。問題は選ぶ側だよ?なんて意地悪なことも聞いてみたくなったりする、父の日の文字が並ぶ週末。見上げる梅雨の空。

ふあうすと2010年8月号「明鏡府」掲載


川柳 20130614

知恵はなくても生きていく足がある

夢は信じ続ければ叶うとか、努力は必ず実るとか。それでも、一段上の場所で空を仰いでいるのは、やっぱりちゃんと、登ろうとした人たちだ。何かがないと言い訳をするよりも、あるものを認めて次を目指してみたいと思う。さすがにもう、ローラースケートの8人目は無理だとしても。

川柳マガジン2011年6月号「足」入選


短歌 20130613

夏の雲たちは形をかえながら「変わらないよ」を飾ってくれた

「変わらないよ、ずっと好きだよ」なんて夏の雲の下で誓ってみせる制服たちは、いったいどれだけの制汗剤を使っているのだろう。若さっていいなぁと羨みながら、その後ろを自転車で走り抜けていく。目指すのはラーメン屋。炒飯セットは外せない。


川柳 20130612

返信にハートマークがついてきた

「お世話になっております」で始まるメールがほとんど。そのあとに続くのがお叱りの内容ではないかと、いつもメールを開くのに勇気を要する。心当たりに息を蒼くしながら言葉を選る仕事。文字のなかで、僕は気ままに街を泳いでいた。

川柳マガジン2009年11月号「手ごたえ」入選


川柳 20130611

この線を越えさせぬ血は父だろう

どんな話をしていたか思い出そうとして、「やすたか」と呼ぶ声の瞬間に、いつも涙が溢れそうになる。強く行けと背中を押してくれているようでもあり、そこは越えてはならないと教えてくれているようでもあり。父はもう、僕の血となって、同じ景色を見ている。

ふあうすと本社句会2007年3月入選


川柳 20130609

前向きの前が見えないヤジロベエ

何かを捨てて前に進んでも、その場所から捨てたものの行方を眺めてしまう。青く眩しい向こうに見える芝生。同じことを繰り返すようで、昨日も今日も足踏みばかり。靴底だけをすり減らして、ため息ばかりを増やして、言い訳だけが得意になっていく。あーあ、もう、パンナコッタ食べたい。

ふあうすと2011年9月号「明鏡府」掲載


川柳 20130608

デジタルをあげよう 母の長生きに

海外旅行に出かけていた母を空港まで迎えにいく。デジカメの画面で説明してくれる思い出は、次第に「これはどこだっけ?」「いつ食べた料理だったかな」という会話になり要領を得ない。思い出せない写真が増えて、そのたび、僕は困った顔をしてしまうんだろう。これからも、何度も。

川柳マガジン2011年2月号「雑詠」入選


川柳 20130607

生かされているから今日をカタツムリ

昨日も与えられて、今日も与えられてる、明日も与えられたらいいな。そんな風に、少しずつを抜けていく。なんてキレイ事で、実際は角や槍を出しすぎている毎日。勝ち負けじゃないのにね。僕の頭はどっちを向いているのか、今日にどんな足跡を残したのか。見えてる?見られてる?

ふあうすと2009年6月号掲載


川柳 20130606

鮎跳ねる川 泣き虫はもういない

流れる水の音が好き。頬に触れる風が好き。パンナコッタが好き。マカロニグラタンが好き。写真を撮るのが好き。ピアノを弾くのが好き。神社仏閣巡りが好き。弱冷車は嫌い、夏。

2008年四万十川川柳全国大会入選


川柳 20130605

刑務所のランチを食べに行くナイフ

罪を犯せば刑務所に行ける、罪を犯せば食べるご飯に困らない。プライドや良心を売って生きていく悲しい時代。夜遅くまで起きる僕を、母は、お化けが来るよと言って怖がらせた。悪いことをすれば、それ相応の罰があるのだと教えてくれた。刑務所のお昼ごはんに、きみは、どんなお子様ランチの幻想を抱いたのか。

川柳マガジン2008年4月号「時事川柳」入選


川柳 20130604

産道を抜ける激安自爆テロ

特攻隊や回天(人間魚雷)に関する書籍を読み耽った時期がある。僕が背伸びをするような、こんな青い空や海を見つめながら、最期に何を思ったのか。書き残された遺書は意気揚々としていて、「本当は?」と何度も問いかけたくなった。それから幾年、まだ、命たちの安売りは続いている。空はこんなに青くても。

ふあうすと2008年5月号掲載