カテゴリー別アーカイブ: 短歌

[短歌]月光の姫よむかしを照らしては栞を抜いて続きを詠え

人生は選択の連続。右を選んだから今日の風は凪いでいるのかもしれないし、左を選んだから僕のこの先は嵐なのかもしれない。あの日あの時、左右を選んでお互いを見送りあった同士に続編があるとすれば、どんな風になるのだろうと考えたがるのが詩人という生き物。月はやっぱり空想を僕に促す。

月光の姫よむかしを照らしては栞を抜いて続きを詠え


[短歌]教科書は正しくないと知るでしょう花が咲いたら伝えあおうか

教科書の通りに雨は降らないし、晴れることもない。間違いないのは、咲いたり散ったり、これからはその繰り返しであるということだ。3月31日、卒業の風は未来へ伝わっていく。それぞれの花を誇る同士になってほしいなぁと思う。

教科書は正しくないと知るでしょう花が咲いたら伝えあおうか


[短歌]三年に一度くらいは涙してほしいと思う君に幸あれ

三年に一度くらいは涙してほしいと思う君に幸あれ #短歌 #短歌フォト #フォト短歌 #言葉 #詩 #卒業 #桜 #思慕

Nishibata Yasutaka / 西端 康孝さん(@bata)がシェアした投稿 –

思い出してほしくもあり、その日々があったから今なのだと思ってほしくもあり。どこでどうしているかは知らない、昔の記憶とそれからの行方。見えないところで笑っていてほしくて、見えないところで泣いていてほしい。なんとも小さな祈り方をする僕という人間は。

三年に一度くらいは涙してほしいと思う君に幸あれ


[短歌]風を見た同士は泣いていいんだよカメラロールに同じいちめん

「だいだい色」が果物のダイダイの実から転じたものであるならば、どうして「菜の花色」という概念は登場(一般化)しなかったのだろうと考えることがある。いちめんの菜の花。そういえば、かの有名なあの詩は、神戸で詠われたものであるということを知った。

風を見た同士は泣いていいんだよカメラロールに同じいちめん


[短歌]輪郭を求めすぎたら疲れるねただ頷いてほしい夜とか

何も教えてほしくはなくて、ただ共感だけをしていてほしい。と、繰り返し心の中に念じながら、アドバイスに耳を傾けている。ため息をして最後に思う。頷いてくれること、その意味と温もりと。

輪郭を求めすぎたら疲れるねただ頷いてほしい夜とか


[短歌]夕暮れの景色になってしまおうか比べることはお休みにして

個の色は大切にしたいなぁと思う。ただ、色を出そうとして無理を強いるのは違うとも思う。ひとつひとつがみんなを構成している。そんな、大きなひとつ。それも生き方のひとつで、優しい景色なのではないだろうか。

夕暮れの景色になってしまおうか比べることはお休みにして


[短歌]影ばかり探そうとする僕でした雲を集めて雨を降らせて

前向きやポジティブという色から遠いところにいれば、それに気付いた優しい言葉がやってくるのではないかと考えていた時期もあった。最初はとても効果的だったその方法も、次第に、大切な人の未来を妨げる荷物へとなっていく。弱さはいっときのカンフル剤。永遠を繋ぐ手段にはなりえないことを知った。

影ばかり探そうとする僕でした雲を集めて雨を降らせて


[短歌]僕たちと呼びあえた日のそれからは右へ左へバカばかりして

回り道、遠回り、ルールから外れて、僕たちのルールを作りあうことが幸せだった。バカをしたなぁと思うし、バカをしたいなぁとも思う。「最近の若い人は」という言葉は羨んで使うものだということを、僕もこの年齢になって気付き始めたな。

僕たちと呼びあえた日のそれからは右へ左へバカばかりして


[短歌]運命と言えば重くて軽くなるひととき君と過ごした記憶

運命という言葉を、誰も、人生のどこかで使ったことがあるだろう。過ぎてそれは、笑い話になってしまうことがほとんどなのだけれど。記憶は綺麗なまま、眩しいままで、何十年経っても残るのだなぁと思う。

運命と言えば重くて軽くなるひととき君と過ごした記憶


[短歌]海になる覚悟を聞いてくれますか永い歴史を始めませんか

永遠の覚悟を文字にする、20歳のそれと40歳のそれとでは、いろんなことが見えてきた分、いろんな意味が伴って異なる。「守りたい」とか「強くありたい」とか。青い想いを言葉にして動こうとするのは、昔も今も変わらないけれど。

海になる覚悟を聞いてくれますか永い歴史を始めませんか


[短歌]曲げないと生きていけないことがある帰ってきたら泣いていいから

芯を曲げることはとても辛いだろうけれど、「柔軟」や「臨機応変」という言葉に甘えてみてもいい。それは生きていくための手段。それは笑っていくための方法。大丈夫、泣いてもいい、昔の顔のままで、大丈夫。

曲げないと生きていけないことがある帰ってきたら泣いていいから


[短歌]夕焼けが帰りなさいと言うようなとても優しいお別れでした

その後を願い合って背中を向けた手のひら。「あれから、幾つかの涙をこぼして、そうして今日はこんなに元気にしています」と、いつか伝えることはあるんだろうか、なんて、西の空に感化されるのは、僕のなかの永遠の青さ。

夕焼けが帰りなさいと言うようなとても優しいお別れでした


[短歌]「あれから」の文字が重なる一日を永遠として春よ急ぐな

3.11の涙を急いで乾かす必要はないと思ってる、3.11に限ったことではないけれど。季節の巡るたび甦ってくる死別や離別の痛み。あの日が冬だったのなら、置き去りにしてしまうような春は、まだ、来なくていい。

「あれから」の文字が重なる一日を永遠として春よ急ぐな


[短歌]在るようで無くて近くて遠いものたとえば羽根の浮かぶ夕暮れ

夜に消えてしまうまでのほんの一瞬に奇跡と出逢った。空を見上げたか、カメラを持っていたか。タイミングは空に与えられても、そのための意識や準備をしておくのは自分の心構えだ。60秒の深呼吸。無性にありがとうが言いたくなる。

在るようで無くて近くて遠いものたとえば羽根の浮かぶ夕暮れ


[短歌]壊れては涙を添えてばかりいる掴めなかった羽根の行方に

ぐにゃりとしたり、ぐしゃりとしたり、僕の来たこれまでには、いくつもの挫折があって、永遠の冷たい風を送り続けてくる。だから詩を書けるのかもしれないし、だから詩に逃げるのかもしれない。羽根をこぼしてしまったことを、否定はしない。その事実が、いまの僕を形成している。

壊れては涙を添えてばかりいる掴めなかった羽根の行方に


[短歌]お眼鏡に適わなかった原石が今でも雨を見上げてしまう

あの日あの時あの瞬間、どうしていれば運命を変えられたのだろうと思うことがある。それはもう、過去の一点であって、そんなことを考えてばかりいるから、原石はいつまでも磨かれないのかもしれない。「石ころ」とは書かない、安い安いプライド。

お眼鏡に適わなかった原石が今でも雨を見上げてしまう


[短歌]微粒子になってしまった日々があり指が和音を思い出さない

「忘れていない」はずのことも、断片となり、微粒子となって宙を彷徨う。もう、拾い集めることもできないくらい粉々になってしまった日々のことは、確かに存在したのに、見えなくて、共鳴をしない。色も音も匂いも、今の僕を構成しているはずなのに、もう。

微粒子になってしまった日々があり指が和音を思い出さない


[短歌]毛布さえかけてやれずにいた日々を今でも夢に見てしまうのは

夢を伝えるのは簡単なことだった。夢の通りに毛布を選んであげることは難しかった。置き去りにしたままの「いつか」は、今でもチクチクと細胞のどこかで僕を責め続ける。あの日あの時の分岐点。先送りにしては誤魔化してばかりいた右や左に、僕はどれだけの全力を尽くせたのかな。

毛布さえかけてやれずにいた日々を今でも夢に見てしまうのは


[短歌]まっすぐはやがて形を変えてゆく「疲れたね」って君は笑った

始まりの通りにすべてが進んでいくわけはないのだけれど、僕は「ぜったい」という言葉を使って、指切りを求めたがった。感情よりもルールに支配されていく空気は重たい。「疲れたね」という言葉に、「だったらどうすれば?」と問い返す。答えは分かっていたくせに、分かっていない顔をして問い返したんだ。

まっすぐはやがて形を変えてゆく「疲れたね」って君は笑った


[短歌]春の来るただそれだけの確信が遠かったんだ だからごめんね

「信じる」や「待つ」という言葉の響きは美しくても、僕たちはすぐに、それを演じようとする自分に酔っているだけであることに気付く。「信じるよ」という言葉の裏側には「疑わないよ」という自分への戒めがあるということ。不安の妄想が、言葉をナイフにしてしまう。

春の来るただそれだけの確信が遠かったんだ だからごめんね