[短歌]そういえば死んだ親父は極楽にいるのでしょうかご機嫌ですか

9月16日は僕の誕生日で、14日は父の誕生日だ。だからなんとなく、昔ひろってきた犬の誕生日は9月の15日に設定した。おまけに敬老の日というイベントもあるものだから、このあたりはなんだかとても賑やかな時期だったような気がする。今はもう犬も父もいなくて、秋が吹くたび、そっちはどうだいと話しかけたくなってしまう。

そういえば死んだ親父は極楽にいるのでしょうかご機嫌ですか


[短歌]初恋の近くで追ったポケモンは卵を抱いた顔で微笑む

気が付けば昔に足を踏み入れていて、いくつかの形跡に、昔とは違う家族の変化に気付いてしまうことがある。どんな風に優しくいて、どんな風に笑っているのだろうなんて想像をしてしまえば苦しいに違いないから、何もなかったように足早に過ぎていく。

初恋の近くで追ったポケモンは卵を抱いた顔で微笑む


[短歌]ミサイルが遠くの国で降る青のクレヨンだけで描けない空

喜怒哀楽の一日を過ぎて、世界の何処かでは涙色をした空があるのだということを思う。血は血と涙を誘って、平穏の鐘はいつまでも響くことがない。「自分さえ良ければ」に、ときどき、残酷な自分の本性を見ているような気がしてしまう。

ミサイルが遠くの国で降る青のクレヨンだけで描けない空


[短歌]地を這ってゆく蝉たちは夢を見る君と交わしたナナネンミライ

夏のスピーカーたちは弱って、最期に、地を這うようにして命を終えていく。ひととき、ひとなつ。ちゃんと出逢えて、ちゃんと残せたんだろうか。ナナネンミライ、約束たちは、親の顔を知らないままにまた、大きな声で鳴けると良いね。

地を這ってゆく蝉たちは夢を見る君と交わしたナナネンミライ


[短歌]潮風に秋を足したら言葉など邪魔な気がした月が笑った

言葉という表現手段を自分の軸に据えていたいと思いながら向かう夏の終わりの夕暮れは、残酷なくらいに僕の言葉を黙らせる。いつまでも月を待とうとする二人の砂浜に、心地の良い風と音が繰り返されていた。

潮風に秋を足したら言葉など邪魔な気がした月が笑った


[短歌]一瞬を重ねていけば永遠になるはずだった背伸びの終わり

壊れやすいその一瞬を、重ねていけば強くなるのだと信じていたけれど、それはただ、無理を重ねていただけのことだった。背伸びは続かず、亀裂になって冷たさを纏う。地に足がつくころ、僕たちは冷静な判断をしてお互いを見送ることを決めた。

一瞬を重ねていけば永遠になるはずだった背伸びの終わり


[短歌]夕暮れが夜に向かってキスをするただそれに似た永い約束

昼は夕にバトンを渡して、夕は夜に添うようにして闇を連れてくる。不変の法則。つまり、そんな風に「変わらない」約束をしたつもりだった。脆くて壊れやすい橋を渡っていたのだと知ったのは、やがてまもなくのこと。宇宙の歴史に程遠い、一瞬の時間だった。

夕暮れが夜に向かってキスをするただそれに似た永い約束


[短歌]続編の便箋たちが行き交った靴箱はもう歌を忘れた

続編の便箋たちが行き交った靴箱はもう歌を忘れた #短歌 #短歌フォト #フォト短歌 #詩 #言葉

Nishibata Yasutakaさん(@bata)が投稿した写真 –

休み時間の靴箱に手紙を置いて「いま」を伝えあったようなことは、手のひら同士の繋がりあう今であればどんな内容になったのだろう。とびきりを伝えたくて、淡い色をした便箋に音符のような内容を詰め込み合った。靴箱はもう歌を忘れて、むかしのことを知る人はいない。

続編の便箋たちが行き交った靴箱はもう歌を忘れた


[短歌]友だちに戻れるようなわけもなく夏の得意なあなたでしたね

新雪に足跡をつけるのが大好きだ。白のキャンバス、僕は僕色を選んで染めるように描いていく。たとえて言うのなら、一度色の着いた雪はもう、二度とは白く戻らないということ。遠く遠く、薄く薄くなっていく。ただそれだけのリアルだということ。

友だちに戻れるようなわけもなく夏の得意なあなたでしたね


[短歌]音符なら言える癒えるとはしゃいでた不協和音に消えた約束

十分に伝わっていたのだろうけれど、伝わったからとて、叶うとは限らない。事実、想って作った僕の楽曲はもう、青の時代を象徴するただの一ページになってしまった。いつがピークで、どの瞬間から下り坂になったのだろうと、歓声の日々を思い出して不思議に思うことがある。

音符なら言える癒えるとはしゃいでた不協和音に消えた約束


[短歌]絵日記の色にならない声たちのまだ耳にいて雲の深さは

ふざけあった言葉や約束の語尾はちゃんと覚えていて、夏の訪れるたび、雲の深さから零れては耳たぶに触れていく。青春は深い青、白が引き立つ。真剣だったんだなぁと思う。青は青なりに、ずっとそんな風のままの青が続くのだろうと信じていた。

絵日記の色にならない声たちのまだ耳にいて雲の深さは


[短歌]告白の日のセミの子の子が鳴いているのでしょうか風の便箋

あの日を鳴いていたセミたちの子どもがいつか空を仰ぐ日も、きっと一緒にいるんだろうと思ってた。もう、あれから、子どもたちは次の世代たちにバトンを渡して夏の景色を担っている。君の行方を知らないまま、セミだけが響いている。

告白の日のセミの子の子が鳴いているのでしょうか風の便箋


[短歌]乾く日の約束をして頬をゆく風の鳴らした鈴は夏色

[短歌]乾く日の約束をして頬をゆく風の鳴らした鈴は夏色

塩屋の旧グッゲンハイム邸を取材で訪れたのは7月のこと。遠くには風鈴の音がして、梅は風を引き寄せて乾いていく。絵はがきの一部になっている感覚、昔と今が混じりあってとても優しい時間を過ごした。

乾く日の約束をして頬をゆく風の鳴らした鈴は夏色


[短歌]まっすぐに影響されるまっすぐで世界が丸くなりますように

恩送り、Pay it forward。いいことをされた、だから、いいことを与えようという考え方が好き。親切は循環する。「許す」とか「与える」とか。巡って、僕は輪のひとつにあることを自覚する。生かされているという言葉の意味を、年々、実感するようになってきた。

まっすぐに影響されるまっすぐで世界が丸くなりますように


[短歌]カタチにはならない言葉たちだけどお届けします箱、満ちるまで

いろんな仕事がある。カタチのないものには値札を貼る場所もなくて、僕たちは時々、隣のショーウインドーに飾られた綺麗な石たちを羨ましい気持ちで眺めて過ごすことがある。しばらく腐って、そしてまた「それでも僕は」と言葉を研磨し始める。心に触れるまで、その箱が満ちるまで、引き出しの尽きるまで夜を越えていく。

カタチにはならない言葉たちだけどお届けします箱、満ちるまで


[短歌]運命の人を海月と知らされた夏の終わりの携帯電話

「なんとか商法」というものに騙されていると思うのは周囲で、案外、本人たちは満足して購入していることが多い。残酷な真実を突きつけられたその後よりも、甘い夢に溺れて果てていくほうが幸せなのではないかと思ったりするがどうか。知ってしまった以後の瘡蓋は永遠に再生しない。

運命の人を海月と知らされた夏の終わりの携帯電話


[短歌]僕たちと呼び合えるのは奇跡だと確率論の甘いお話

僕たちと呼び合えるのは奇跡だと確率論の甘いお話 #短歌 #短歌フォト #フォト短歌 #詩 #言葉

Nishibata Yasutakaさん(@bata)が投稿した写真 –

あべのハルカスの300mの展望台から眺めると、僕たちはミニチュアであることを思い知らされる。ミクロとミクロが巡りあう奇跡、ここまでとこれからを甘い物語にしてお話をしてみたくもなる。偶然は必然になって、必然は永遠に。生きてこそ、動いてこその、いま、ここにいるということ。

僕たちと呼び合えるのは奇跡だと確率論の甘いお話


[短歌]きょうという日は特別な予感して右脳を寄せるカウンター席

右脳だとか左脳だとか、難しいことはよく分からないけれど、同じ側同士で喋っているような感覚は好きだし、違う側の自分を必要とされる感覚も好きだ。「いま、僕はどっちの脳で話をしてるんですかね?」「大した話でもないし、脳みそ、止まってんじゃない?」なんて言われて笑い合う、もちろん、そんな感じも嫌いじゃない。

きょうという日は特別な予感して右脳を寄せるカウンター席


[短歌]大漁のいつかを見せてやれなくて僕だけの聞く風の往来

「任せておけ、こんなにたくさん釣ってやるからな」だとか「将来俺は、必ずおまえを幸せにする」だとか。大きなことを言って、大きなことで疲れさせて、いつのまにか独りにもどって風の音だけを聞いている。言葉にどれだけの責任をもって行動に移したのだろうかと、夢の残骸たちに風が吹き抜けていく。

大漁のいつかを見せてやれなくて僕だけの聞く風の往来


[短歌]つなぐ手を伝う涙もあるでしょう弱さの夜を過ごしましょうか

優しさに満ちた空気だけを交換しあうよりも、弱さを見せ合って共有できるようになることを「強い」と言うのだろうと思う。ときには理由を聞いたり、ときには黙ってうなずいていたり。底を抜けたら、もう、同じことでは泣かせたくないと強がってみたり。

つなぐ手を伝う涙もあるでしょう弱さの夜を過ごしましょうか